2016年6月14日

AVANTI 常連客の「話の聞き方」術

背もたれに寄りかかり、カクテルを飲みながらスラスラと語りだす客。

テーブルに肘を乗せて、身を乗り出しながらその話を聞く常連客。

少し離れたカウンター席で、2人の会話に聞き耳を立てる大学教授。

バーの店内にはジャズが心地よく流れる。

かつてSuntory Saturday Waiting Bar Avantiというラジオ番組がありました(Podcast)。
バーに訪れるお客さんが、常連客と雑談する内容を放送する番組です。もちろん本物のバーで収録しているわけではなく、そのお客さんも客という設定。話の「聞き役」に当たる常連客もそういう設定。
1時間の放送の中でおよそ3~4組の話が放送され、その内容は副題の通り 東京一の日常会話 そのものでした。

客として話をしていたのは、タレントなどの有名人をはじめ、学者、料理家、テレビマン、スポーツ選手など多種多様で、どんな職種の人の話でも聞くことができたのがこの番組の魅力の1つでした。例えば電子書籍の話について、漫画家が「左右のページの境目が湾曲しているところまで計算して描いているのに、電子化された画面で見るとその部分も平面になって見え方が変わってしまう」など、その道のプロしか気が付かないようなことを言っていたのは面白かった。

ただ、全てのゲストが話し上手なわけではないと思います。メディアになかなか出ないような職種の人もたくさん出演していました。
ゲストの話を面白くしていたのが「聞き役」である常連客の人たちです。だいたい固定されたメンツで、彼らの正体は公式には明かされていませんでしたが、その多くは雑誌の編集長だったようです。
彼らについても書きたいことがたくさんあるのですが、この番組について書きたいことがたくさんあるので割愛します。

・・・と思ったのですが、やっぱり聞き役の常連客についてさわりの部分だけ書いておくと、

「この人は話が通じる人だ」って相手にそれとなく伝える

のがすごく上手だなって思いました。例えば地名が出たら「ああ、○○で有名なところですよね」とサラッという。こうやって「私は話が通じる人ですよ。遠慮なくどんな球でも投げてきてください」というアピールをさりげなくしていました。話す側って結構「分かりやすく話そう」とか「ここまで言うと専門的すぎて伝わらないかな」などと考えてしまいがちなんですけど、相手は話が通じる人だとわかれば、手加減をする必要がなくなって余計なことを考えなくて済むから、結構直球で話をするようになるんです。そして、そういう直球の話こそが面白い。もちろんこういう気の利いた一言をサラッと言えるようになるためには、幅広い知識を持ち合わせていないといけないわけで、そこらへんはさすが雑誌の編集長って感じです。

ちなみに付け加えると(さわりだけ書くつもりでしたが、これだけ書かせてください!)「さりげなく」という部分が大事で、聞き役はあくまで「聞き役」ですから、自分はしゃべりすぎたらいけません。心地よく合いの手を入れながら、相手がしゃべりやすいように誘導するのが絶妙にうまいな、と聞きながら感心していました。例えば「ああ、○○で有名なところですよね」だけで止まらずに、間髪入れず「そこで?」と質問して相手に素早くパスを渡す。単に「ああ、○○で有名なところですよね」で止まっちゃったら、自分の知識アピールで終わっちゃいますからね。「そこで?」と話を振って、すぐにボールを渡す。あと、細かいんですが「そこで何があったんですか?」まで言ったらしゃべりすぎで、「そこで?」くらいの軽いトスが一番いい。こういう細かいところも抜群なんですよ。
あとは相槌も上手なんですよねー。ってこのままだとキーボードを打つ手が止まらなくなってしまいそうなのですが、とにかくよく笑う。やっぱり笑顔って大事なんですね。

未だに中二病 真っ盛りの僕はこの番組の影響を受けて、ご飯を食べながら近くのお客さんの話に聞き耳を立ててしまいます。質問して話を掘り下げたい気持ちをぐっと抑えながら、心の中で「大人の仕事の悩みも、結構大学生のバイトが言ってることと似てるんだなー」などとフムフム言ってます。