語源と語感

 僕は ①言葉の語源や由来を知ること と ②語感(言葉の音が人に与える印象)が好きです。それぞれ全く独立したものとして楽しんでもいいのですが、この2つをつながっていていると考えるとなお面白いです。

 まずは ①語源 について簡単に説明します。語源に興味を持つようになったきっかけは、英単語の暗記に役に立つからです。
 例えばネイティブの人にとって、「sta」という音節は「人が立っている」というイメージとつながるようです。
 stand = 立つ
 distance = 距離(2人の人が離れて立っているイメージ)
 station = 駅(もともとは馬がたくさんいるところだった)

 他には「spr」という音節は「一つの点からブワ~っと広がる感じ」につながります。
 spray = スプレー
 sprinkler = スプリンクラー(学校の校庭に水をまく機械)
 sprawl = 街が広がる
 sprout = 芽・もやし(豆からぐんぐん伸びて成長する)

 語源は必ずしも万能ではありませんが、単語によっては初見でも意味を推測することも可能になりますし、新しい単語を暗記するときに語源もセットで覚えておくと、頭に入りやすいです。僕は英単語を調べるために辞書を引くときは、必ず語源にも目を通すようにしています。

 英語の語源は、漢字の「編」に似てるとよく言われます。例えばさんずいは水に関係のある、といった具合ですね。これは非常に納得しやすい話です。
 ただし、英語の語源が似ているのは漢字だけにとどまりません。例えば「水に関連する言葉にはひらがなの”し”が入っていることが多い。しずく、したたる、しおれる…」など。なんだか先ほど説明した英語の語源の構造と似ていますね。音と辞書的な意味が関連を持ち始めました。ここから②語感の話に移ります。

 語感が最も顕著に表れているのはオノマトペです。余談ですが、日本語を勉強している外国人は「オノマトペが好き」という人が結構多いような印象があります。

 簡単に語感の例として、コロコロとゴロゴロの違いを挙げます。コロコロというのは非常に軽いものが転がっているように聞こえますが、ゴロゴロだと重たい印象を受けますね。ものすごく大雑把に言うならば、コロコロとゴロゴロの違いは「軽」と「重」です。一般的に濁点の有無によって「程度の変化」を生むことができると言われており、さらに突っ込んで「なんで程度の違いが生まれるの?」というと、これは僕の仮説ですが、口の中で音が鳴る場所が関係あると思います。つまり、k音は口の手前の方で音が鳴るのに対し、g音は奥の方で鳴る。口の手前で鳴る音は外に出てくるのが簡単だからあっさりした印象を与え、喉の奥の方で鳴る音は外に出てくるのが大変だからドッシリした印象を与えるように思います。ちなみにヘヴィメタルのデスボイスは喉の一番奥の方で鳴らし、そういった音はよく「ゴー」という擬音で表現されますね。
 ついでに他のもう1つ仮説を書かせてもらうと、k音もg音も 舌の奥 と 口の天井 が離れる瞬間に出る「破裂音」ですが、その破裂するまでにくっついている時間の長さが関係しているように思います。つまり、k音よりもg音の方が舌と口が長い時間くっついて、へばりついている。それのへばりついている感覚が「聴覚」ではなく「触覚」として相手に伝わっているような気がします。

 僕の仮説はこのくらいにして話を語感に戻しますと、グリコのお菓子に関して面白い話があって、必ずと言っていいほど商品名に「パ行」が入っています。ポッキー、パピコ、プリッツなどなど。グリコのサイトによれば、発音が歯切れも良く、明るいイメージがあるとのことで確かにその通りだと思います。パ行の言葉には非常にポップな印象を受けます。
 あとは駅の中にある「KIOSK」。元々は英語で、こんなのどう考えたって「キオスク」って読むに決まってるのに、実際は「キヨスク」と読む。なんでか?というと、「キヨ」という音の組み合わせが「清」という漢字を連想させるため、清潔感を与えることができるとのこと。なるほど~。これは日本人固有の語感ですね。


 ①(英語の)語源 も ②語感 も、言葉の持つ辞書的な意味と、音の持つイメージを関連しているという点で共通です。語源と語感、どっちが先に生まれたか考えると、おそらく後者でしょう。言葉の無かった時代、原始人みたいなひとがウホウホ言いながらコミュニケーションをとっていた。これだけでも大雑把なところはコミュニケーションが取れていたのでしょう。これが言葉の起源。想像を逞しくして原始人の気持ちになってみると、もし嬉しい気持ちを伝えようと思ったら、僕は「ウピャウピャ!」みたいな高い音を口で出すかも。間違っても「ウゴーウゴー」みたいな低い音は出さないと思います。
 それからしばらくして口の筋肉が発達したのか、あるいはもっと詳細な情報を伝える必要が出てきたのか、いずれにしてもウホウホ言うだけじゃなくて音の細分化が始まった。それでもやっぱり原始人が音で気持ちを伝えようとした部分は根底に残っていて、それが今でも続いている、と言われても違和感はありません。
 そうやって考えると、英語の語源も、日本語のオノマトペも、同じ先祖を持った親戚のようなものかもしれないです。というか所詮は同じ人間が考えることだから、言葉なんてどれも似ていて当たりかも。そういった考え方をすると、英語を話したり英単語を覚えたりするのもなんだかハードルが低くなったように気がしませんか? 僕だけですかね?



参照サイト:
語源辞典 | 英語・発音・語彙/英語耳
↑このサイトの作成者である松澤喜好さんの著書『単語耳』シリーズは、僕のバイブルです。
「甘い」と書いて何と読むか? | 語感言語学 言語学試論
音感覚から見る日本語 | welcome to tomomi ando's page